微小空間における吸着現象

by Murota & Saito

微小な空隙中における水はバルク水に比べて構造化し、比誘電率等の性質が変化することが知られている。一方、そのような微小な空隙の表面とイオンとの吸着などの表面反応がより大きな空間でのそれとどのように異なるのかは明らかでない。そこで、基本的な表面反応である水酸基のプロトン解離反応に着目し、マイクロポア及びメソポアを持つ6種類のメソポーラスシリカの異なるイオン強度及びpHにおける表面電荷密度をバッチ滴定試験から求めることで、表面電荷密度の空隙径依存性を調べた。さらに、得られた表面電荷密度に対して円筒座標系のPoisson-Boltzmann式に基づく電位分布を仮定した表面錯体モデルをフィッティングすることで、空隙表面近傍の水の状態と表面反応とを関連付けた。その結果、電気二重層のオーバーラップの影響により、空隙径が小さくなるにつれて表面電荷密度の絶対値が小さくなることが示された。さらに、特に4 nm以下の空隙において、空隙径が小さくなるにつれてフィッティングによって最適化したStern層の静電容量が小さくなることから、微小な空隙表面近傍の水の比誘電率が低下していることが考えられる。

Murota, K.*, Saito, T., “Pore size effects on surface charges and interfacial electrostatics of mesoporous silicas”, Phys. Chem. Chem. Phys., in press (2022).