深部地下海洋堆積物中の溶存有機物の起源と金属イオンとの結合反応

研究背景と目的:

深部地下水に含まれる溶存有機物(DOM)は,汚染物質や栄養塩の移動に大きな影響を与えます.特に,高レベル放射性廃棄物(HLW)地層処分の安全性評価において,DOMと放射性核種との結合特性の理解が重要です.

表層環境のDOMに関しては多くの研究があり,その特性や起源,金属イオンとの相互作用について,詳細に調べてられています.本研究では、北海道幌延町にある日本原子力研究開発機構の地下研究施設において,さまざまな深度で地下水を採取し,DOMの起源・特性と金属結合能を評価しました.

主な成果:

  • 蛍光スペクトル(EEM)とPARAFAC解析により、4種類のDOM成分(海洋起源ヒューミック様1種、陸地起源ヒューミック様2種、タンパク質様1種)を同定。
  • Eu³⁺は陸地起源のヒューミック様DOMと強く結合するが、海洋起源のヒューミック様DOMとは弱い結合を示した。
  • 地下水中のDOMの空間分布は、堆積岩由来のDOM供給、微生物による分解、隕入した化石隕水と海水の混合によって支配されていた。
  • 地下水中のDOMの起源・組成の違いが、金属イオン(特に放射性元素)の移動に重要な影響を及ぼす可能性を示唆。

環境的意義:

  • DOMの金属結合特性の違いを考慮した詳細なモデル化が必要。
  • 深部地下水中のDOMの動態理解は、放射性廃棄物処分場の長期安全性評価や、一般的な地下環境における汚染物質移行リスク評価に重要。

Saito, T., Nishi, S., Amano, Y., Beppu, H., Miyakawa, K., “Origin of dissolved organic matters in deep groundwater of marine deposits and its implication for metal binding”, ES&T Water, 3, 4103-4112 (2023).